「錆びた包丁を捨てるのはもったいないし、買い直すのも手間。それなら、自分で錆びを落としてみよう」。そんなご家庭の方に向けて、包丁の錆びの落とし方と、錆びさせない毎日の手入れをご案内します。
| 工程 | やること | 目安 |
|---|---|---|
| 錆びを落とす | 水をつけながら、クレンザーや錆び取り用の消しゴムで刃の面をこする | 刃の面に錆びを見つけたとき |
| 研ぎ直す | 目の粗い砥石で刃先の錆びを落とし、ふだんの研ぎに使う砥石で刃を整える | 刃先まで錆びたとき |
| 洗う | 台所用の中性洗剤をつけたスポンジで刃と柄を洗い、水ですすぐ | 料理を作り終えたら、食べる前 |
| 拭く | 乾いたふきんで、刃と柄の水気を拭き取る | 洗ったらすぐ |
| 乾かす | 拭いたあとも少し置いて、残った水気を飛ばす | 刃と柄に水気が残らなくなるまで |
| 油を塗る | 鋼(はがね)の包丁は、乾いた刃の面に油を薄くのばす | しまう前 |
表の上の2つが錆びが出たときの手当て、下の4つが毎日の手入れです(最後の行は鋼の包丁だけ)。まずは、包丁がなぜ錆びるのかからご案内します。
包丁の錆びは、塩分・水気・酸が刃に残ったままになると出る
包丁の錆びは、切った食材に含まれる塩分や水気、酸が刃に残ったまま、空気に触れることで出てきます。漬け物やレモンのように、塩分や酸の多いものを切ったあとは、とくに早めに洗い落とします。
水気を拭かずに置いておくと、一晩で錆びが出ることもあります。湿気の多い時期は、ふだんより錆びやすくなります。
ステンレスは錆びにくい材質ですが、まったく錆びないわけではありません。ステンレスは、空気に触れると表面に錆びを防ぐ薄い膜ができます。汚れや水気が残っていると、この膜がうまくできず、ステンレスの包丁にも錆びが出ることがあります。
錆びは、放っておくと金属の中へ進み、深く入った錆びは落としきれないことがあります。ここからは、錆びの落とし方を、刃の面と刃先に分けてご案内します。
刃の面の錆びは、クレンザーや錆び取り用の消しゴムで早めにこすり落とす
刃の面に出た錆びは、クレンザーでこすり落とします。クレンザーの代わりに、錆び取り用の消しゴムでこすり落とす方法もあります。どちらも、乾いたままではなく、水をつけながらこすります。
刃の面をこするときは、包丁を動かさないことと、刃先に触れないことが安全の要です。錆びを落とす手順は、次のとおりです。
まな板の上に包丁を寝かせ、刃先がまな板にぴったり付くように置きます。利き手と反対の手で柄を持ち、包丁が動かないように押さえます。
クレンザーを使うときに、ワインのコルクやプラスチックの消しゴムにつけてこすると、錆びが落ちやすくなります。錆び取り用の消しゴムは、強くこすると刃の表面に細かな傷が付くことがあるので、錆びの出たところだけを軽くこすります。
利き手で道具を持ち、刃先に指がかからない位置で、錆びの出たところを小さく動かしてこすります。
片面が終わったら、手と柄に付いたクレンザーや水気をふきんで拭き取ります。利き手と反対の手で柄を持って包丁を持ち上げ、まな板の上でゆっくり裏返して、反対の面も同じように落とします。
両面とも錆びが落ちたら、刃を水で洗ってクレンザーや削れた錆びを流し、乾いたふきんで片面ずつ水気を拭き取ります。
刃先にも錆びが出ているときは、刃の面を落としたあとで、次の「刃先まで錆びたとき」の手順に進みます。
刃先まで錆びたときは、砥石で研ぎ直す
刃先はものを切る部分なので、こすると刃をつぶしてしまうおそれがあります。刃先の錆びには、目の粗い荒砥石を使います。荒砥石で錆びを取ったら、包丁と手を水で洗って荒砥石の研ぎ汁(研いだときに出る黒っぽい水)を落とし、中砥石(ふだんの研ぎに使う、目の細かさが中くらいの砥石)に替えて研いで、刃を整えます。
錆びた包丁でも、錆びを落として研ぎ直せば、切れ味を取り戻せることが多くあります。研ぐときの包丁の持ち方や角度は「包丁の研ぎ方」で、荒砥石と中砥石の違いは「砥石の選び方と使い方」でご案内しています。
研ぎ直しが済んだら、そこからは錆びを出さない手入れに切り替えます。
毎日の手入れは、使い終わったらすぐ「洗う・拭く・乾かす」
包丁は、料理を作り終えたら、食べる前に洗います。食事のあとにまとめて洗い物をするご家庭でも、包丁とまな板だけは先に洗っておくと安心です。
洗うときも拭くときも、包丁はまな板の上に寝かせ、利き手と反対の手で柄を押さえて、刃先に指がかからないようにします。手順は、洗う・拭く・乾かすの順にご案内します。
柔らかいスポンジに台所用の中性洗剤をつけ、刃の面をこすります。スポンジで刃をはさんで洗わないようにします。片面を洗ったら、手と柄の泡を水で流してから裏返し、反対の面も洗います。刃を洗い終えたら柄も洗い、洗剤が残らないように水でよくすすぎます。
利き手で乾いたふきんを刃の面に当てて、片面ずつ水気を拭き取ります。ふきんで刃をはさんで拭かないようにします。柄の水気も拭き取ります。
拭いたあとも、乾いたふきんの上など、水気がなく落ちない場所に寝かせて少し置き、残った水気を飛ばします。乾いたことを確かめてから、湿気の少ない場所にしまいます。
しまう場所や、しまい方の工夫は、別の記事「包丁の保管方法」で取り上げる予定です。乾かすところまで済ませて、はじめて洗い物が終わったと考えておくと、毎日続けやすくなります。反対に、手間を省こうとしてやりがちな洗い方・乾かし方には、錆びや傷みにつながるものがあります。
錆びや傷みを招く洗い方・乾かし方は、6つ避ける
洗い物が多い場面ほど、手間を省きたくなります。次の6つは避けます。
包丁は手で洗います。食器洗い乾燥機では、目に見えない汚れが刃に残ったまま高い温度で乾かされるので、錆びが進むおそれがあります。ほかの食器を入れる前に、包丁だけ先に手で洗って拭いておきます。
錆びにつながることがあるので、包丁には使いません。
刃に傷が付き、錆びの原因にもなります。錆びを落とすときにも使いません。
洗い桶の水やお湯に包丁を入れたままにしません。錆びるだけでなく、柄が傷む原因にもなります。
拭かずに置いておくと、ほかの食器とぶつかって刃が欠けたり、はねた水で錆びたりすることがあります。
早く乾かそうとして、包丁を中に入れることはしません。
ここまでの洗い方・乾かし方は、ステンレスの包丁でも鋼の包丁でも同じです。鋼の包丁には、もう一手間を足します。
鋼の包丁は、乾かしたあとに油を薄く塗る一手間を足す
包丁の材質には、主に鋼とステンレスがあります。鋼は鉄に炭素を加えた金属で、ステンレスはそこにクロムという金属を加えて錆びにくくしたものです。2つの大きな違いは、錆びやすさです。手元の包丁がどちらか分からないときは、買ったときの箱や説明書で材質を確かめておきます。
塗る油は、刃物用の椿油か、サラダ油のような食用の油を使います。工具用の錆び止め油は、食材を切る包丁には使いません。
包丁は乾いたふきんの上に寝かせ、洗うときと同じ持ち方で、油を少し含ませた布やキッチンペーパーを刃の面に薄くのばします。片面に塗ったら、手と柄の油を拭き取ってから裏返し、反対の面にも塗ります。最後に、柄に付いた油をもう一度拭き取ります。
鋼の包丁は、手入れをしていても錆びが出ることがあります。とくに使い始めてしばらくのあいだは錆びが出やすく、錆びを落として拭く手入れを繰り返すうちに、錆びが出にくくなることが多くあります。箱や説明書が見当たらず材質が分からないときも、鋼の包丁と同じように油を薄く塗っておくと安心です。
毎日の手入れを続けると、錆び取りの手間を減らしやすい
錆び取りは、手順を覚えておけば、ご家庭でも取り組みやすい作業です。毎日の手入れで錆びを出しにくくしておけば、錆びを落とす手間もかかりにくくなります。捨てるのはもったいないと思った包丁も、手入れを続ければ、長く使い続けやすくなります。
錆びを落としたあと、落ちてきた切れ味を手早く戻したいときの道具選びは、「包丁研ぎ器・シャープナーの選び方」にまとめています。まずは今日の洗い物から、毎日の手入れを始めてみてください。
お問い合わせ
当店では、包丁の研ぎもできます。錆び取りや毎日の手入れの手順は、記事のはじめの表のとおりです。用途に合う道具や金物が分からないときは、お気軽にご相談ください。


